製品関連 ニュース
- 製品関連2022/07/26
- 尿中Gd-IgA1測定の可能性を示唆 (IgA腎症早期スクリーニングおよび重症度の判断に)
本IBLニュースで紹介している当社の製品は、研究用試薬であり、診断や医療目的に用いることはできません。
順天堂大学医学部・大学院医学研究科腎臓内科の鈴木祐介教授および鈴木仁教授率いる研究グループは、韓国(慶熙(キョンヒ)大学医学部腎臓内科)および台湾 (高雄医科大学病院腎臓科) のIgA腎症研究グループとの共同研究(以下、本研究)において、尿中ガラクトース欠損IgA1(以下、Gd-IgA1)測定が、IgA腎症の早期スクリーニング、および重症度の判断に有用な疾患特異的マーカーになり得る可能性を示唆する研究結果を報告しました。
【尿中Gd-IgA1の測定】
本研究では、上記各国の研究グループによるコホート研究において採取した尿検体を、IgA腎症患者群とその他の腎臓疾患患者群に分けて、尿中Gd-IgA1値を測定しその有用性について検証しました。
(IgA腎症患者群)
腎生検によりIgA腎症と確定診断されたIgA腎症患者群です。
338人(日本人)
69人(韓国人)
35人(台湾人)
(疾患コントロール群)
その他の腎症患者の尿検体群です。
120人(日本人)*1
39人(韓国人)*2
*1 ANCA関連糸球体腎炎(抗好中球細胞質自己抗体による糸球体腎炎)、ループス腎炎、微小変化群(MCD)、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、non-IgAメサンギウム増殖性糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症 (FSGS)、尿細管間質性腎炎(TIN)、腎アミロイドーシス、糖尿病性腎臓病 (DKD)、腎硬化症、菲薄基底膜病(TBMD)
*2 ANCA関連糸球体腎炎(抗好中球細胞質自己抗体による糸球体腎炎)、ループス腎炎、微小変化群(MCD)、菲薄基底膜病(TBMD)
【結果】
日本人と韓国人のIgA腎症患者群の尿中Gd-IgA1値は、疾患コントロール群に比べて高値であり、また、IgA腎症患者群において、韓国人および台湾人の尿中Gd-IgA1値は日本人よりも高値でした。
また、日本人IgA腎症患者では尿中Gd-IgA1値はIgA腎症患者の組織学的重症度と有意に相関し、軽度の蛋白尿症例でも検出されたことが確認されました。
尿中Gd-IgA1の境界値を>50ng/mLと設定し分析した結果、オックスフォード分類スコアMEST-CのTスコア(尿管委縮、間質の繊維化)との相関が認められました。本Tスコアは、以前の研究において、腎症の予後不良と関係していることが報告されています。
本研究において、尿中Gd-IgA1は、IgA腎症の早期スクリーニングだけでなく、腎症の予後不良と関係しているオックスフォード分類スコアMEST-CのTスコアとの相関が認められたことから、IgA腎症の疾患活動性を決定づけるツールとして、IgA腎症の重症度の判断に有用な疾患特異的マーカーとなり得る可能性が示唆されました。
【IgA腎症について】
IgA腎症はもっとも一般的な原発性糸球体腎炎であり、世界で発表された40報の研究報告によると、世界のIgA腎症の罹患率は、年間10万人に2.5人と報告されています。未治療の場合は予後不良となり、発症後20年以内に約20~40%が末期の腎不全に病状が進行するという報告もあります。
Gd-IgA1は抗グリカン自己抗体に認識され、その結果、病原性の免疫複合体(Immuno-complex)を形成し、それらは腎臓に蓄積され、その結果、メサンギウム細胞が刺激され糸球体障害を引き起こします。
腎生検はIgA腎症の確かな診断法ではありますが、侵襲性が高いため何度も実施することはできず、また、明らかな蛋白尿が見受けられない患者においても、腎生検によりIgA腎症と確定診断されるケースも見受けられることから、尿蛋白値が必ずしも疾患活動を反映しないと考えられ、尿蛋白値は治療を決めるには不十分な指標であると示唆されています。
IgA腎症の早期発見および早期治療が可能となれば、IgA腎症を臨床的回復に導くことができるため、臨床現場においてIgA腎症の早期スクリーニング、早期診断、そして重症度を決定づけるために有用な非侵襲性の疾患特異的マーカーが必要とされています。
詳しくは下記原文をご参照ください。
Y Fukao et al. Galactose-Deficient IgA1 as a Candidate Urinary Marker of IgA Nephropathy. J Clin Med. 2022 Jun 2;11(11):3173.
PMID: 35683557
本論文では、尿中Gd-IgA1の測定に、Gd-IgA1を特異的に検知するモノクローナル抗体(KM55)を用いた、#27600 Gd-IgA1 (Galactose-deficient IgA1) Assay Kit - IBLが使用されています。
【関連製品】
#10777 Anti-Human Gd-IgA1(KM55) Rat IgG MoAb
皆様の研究活動にお役立て頂ければ幸いです。
お気軽にお問合せください。
株式会社免疫生物研究所
抗体関連事業本部 営業部
TEL: 0274-50-8666
Email: do-ibl@ibl-japan.co.jp
株式会社免疫生物研究所(IBL)~抗体開発への想い(社長メッセージ)~
株式会社免疫生物研究所(IBL)~抗体開発への想い~
LipoSEARCH® - リポタンパク質詳細分析 (特許取得済み GP-HPLC Systems)